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市川染五郎の家系図は?屋号と名跡一覧を付けてわかりやすく説明

市川染五郎家系図
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大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に木曽義高役で出演し、美しい貴公子として評判の8代目市川染五郎さん。

歌舞伎役者の家系に生まれましたが、どのような家系なのでしょうか?

8代目市川染五郎さんは、歌舞伎界でも権威のある有力な松本幸四郎家の宗家に生まれました。

松本幸四郎家は江戸時代中期から続く一門で、特に明治以降を見ると古典歌舞伎に止まらず、映画や現代演劇でも活躍する役者を輩出しています。

今回は家系図に屋号の説明や名跡の一覧も付けて、松本幸四郎家(高麗屋)の歴史を簡単に見ながら家系をたどりたいと思います。

 

8代目 市川染五郎の家系図

当代8代目市川染五郎は、高麗屋を名乗る松本幸四郎家の家系に属します。

「高麗屋って何?市川と松本、苗字が違うけど同じ家系?」と疑問を持つ方もいるかと思います。

ここで簡単に「屋号」と「名跡」の説明をします。

  • 屋号:江戸時代は武士階級以外は苗字を許されず、他の階級は苗字に代わるものとして「屋号」を名乗りました。
  • 名跡:簡単に言うと歌舞伎役者の芸名です。ただの芸名ではなく、歴代が演じた演目の役柄の積み重ねから芸格の高さや権威も合わせ持ちます。

松本幸四郎家は高麗屋という「屋号」の一門です。

市川染五郎、松本幸四郎は「名跡」つまり芸名で苗字(姓)と名前ではありません。

この家系は成田屋の市川團十郎と縁が深く、團十郎に跡取りがいないとき松本幸四郎家から養子が入り團十郎を襲名することがしばしば見られます。

これは人の人との血縁関係でなく、松本幸四郎家の名跡が歌舞伎界で権威ある名跡市川團十郎を継ぐことができるという先例が成り立っているようです。

近年の松本幸四郎家と市川團十郎家の関係が分かる部分を抜粋して表にしました。

8代目 市川染五郎の家系

まず、当代8代目市川染五郎さんのプロフィールを簡単にご紹介します。

  • 屋号    高麗屋
  • 生年月日  2005年3月27日
  • 本名    藤間 齋(ふじま いつき)
  • 襲名歴   1.  4代目松本金太郎
    ・    ・2.  8代目市川染五郎
  • 出身地   東京都
  • 祖父    2代目松本白鸚
  • 父     10代目松本幸四郎
  • 妹     松田美瑠

父方の家系をたどると、著名で実力のある歌舞伎役者が名を連ねます。

芸の技術はもちろん遺伝しませんが、歴代で実力のある役者を輩出する血筋にはやはり優れた資質が引き継がれ、厳しい修練でそれが開花するのを感じます。

 

(曾祖父)初代 松本白鸚(1910 – 1982)

古典歌舞伎では、「勧進帳」の武蔵坊弁慶、「仮名手本忠臣蔵」の大星由良助など多くの当り役を持つ名優です。

歌舞伎界に止まらず演劇や映画に積極的に出演し、歌舞伎役者が他分野で活躍する素地を作りました。

映画でも「忠臣蔵 花の巻・雪の巻」の大石内蔵助は印象深く、世間一般が歌舞伎役者に関心を持ち認識する機会を高めたと思います。

またテレビ時代劇「鬼平犯科帳」で演じた長谷川平蔵は当り役となり、2代目中村吉右衛門、10代目松本幸四郎と当家に継承されています。

 

(祖父)2代目 松本白鸚(1942 –   )

9代目松本幸四郎として活躍した期間が長く、世間ではこの前名で記憶されている方も多いと思います。

歌舞伎では、古典演目の「勧進帳」の武蔵坊弁慶役は現役最多の出演記録を持ち、時代物で高い評価を得ています。

古典芸能だけでなく、大河ドラマやテレビのドラマにも出演が多く、古典芸能の歌舞伎役者と現代劇の俳優を違和感なく演じています。

また、現代劇やミュージカルでも活躍して実績を残し、海外では英語で「ラ・マンチャの男」や「王様と私」の主役を演じ高い評価を得ました。

古典演劇と現代演劇の両方で活躍し高い評価を得ている、才能と実力を兼ね備えた役者です。

 

(大叔父)2代目 中村吉右衛門(1944 – 2021)

2代目松本白鸚の弟です。

古典歌舞伎の「勧進帳」や「義経千本桜」などでの武蔵坊弁慶役が当たり役。

テレビの時代劇「鬼平犯科帳」で演じた長谷川平蔵役は人気を博し、世間一般では「吉右衛門といえば鬼平」と思う人も多いと思います。

私もその一人で、吉右衛門さんが時代劇に出演するとその存在感と雰囲気で強い印象を残しました。

 

(父)10代目 松本幸四郎(1973 –   )

 

古典歌舞伎だけでなく新作歌舞伎にも出演し、二枚目の立役から女方までと役も幅広く演じます。

歌舞伎以外の演劇でも活躍し、テレビの時代劇やドラマの出演も多く、父である2代目松本白鸚と同じタイプで古典演劇と現代演劇の両方で活躍する多才な役者です。

2024年公開予定の映画『鬼平犯科帳』で、主役の長谷川平蔵を演じることが報道されました。

祖父である初代松本白鸚の当たり役であり、また叔父である2代目中村吉右衛門も演じ人気を博した鬼平役を継承することになり、歌舞伎の演目ありませんが高麗屋のお家芸と見ることができます。

 

屋号と名跡一覧

市川染五郎家系図

歌舞伎の名跡は、屋号を名乗る一門が管理し、多くは血縁者や養子(近親者や門弟など)によってこれを相続していきます。

名跡は簡単に言うと歌舞伎役者の芸名なのですが、ただの芸名ではなく歴代の襲名者が演じた演目や役名によって伝統的に築き上られてきた芸格を示します。

つまり、名跡を襲名するのはその芸格を受け継ぐことです。

高麗屋

高麗屋は江戸時代中期に成立し、現在まで続く歌舞伎界の名門です。

初代松本幸四郎が若い頃、「高麗屋」という商家に奉公していたことが屋号の由来となっています。

初代松本幸四郎は屋号としては大和屋を名乗り、2代目以降は高麗屋を名乗っています。

もともとは市川團十郎の門弟筋になる家ですが、2代目松本幸四郎は2代目市川團十郎の実子とうわさされ、後に4代目市川團十郎を襲名しています。

3代目松本幸四郎は2代目の実子で、実父の後を継ぎ5代目市川團十郎となっています。

このような縁があり近代でも、後継ぎがいない10代目市川團十郎に松本幸四郎家(高麗屋)から養子が入り、11代目市川團十郎の名跡を継いでいます。

こう見ると、初期は血縁関係で養子縁組が成り立っていますが、血縁関係がなくなった後には家同士の関係、市川團十郎と松本幸四郎の名跡が持つ芸格のつり合いが重要視されていると考えられます。

単純な血縁関係だけでなく、家や名跡の継承者、名跡が持つ芸格の高さが背景にあり、歌舞伎界の複雑な成り立ちを垣間見ます。

 

高麗屋の名跡

高麗屋の主な名跡を一覧にしました。

一門には宗家と門弟筋がありますが、

  • 宗家は、養子を含む血縁関係が引き継がれていきます。
  • 門弟は、師匠と弟子の関係にあります。

ここでは、宗家と門弟筋の名跡を見ていきます。

(宗家)

  • 松本幸四郎  (まつもと こうしろう)
  • 松本白鸚   (まつもと はくおう)
  • 市川染五郎  (いちかわ そめごろう)
  • 松本金太郎  (まつもと きんたろう)

それぞれの名跡を簡単に説明すると、

  • 松本幸四郎は、歌舞伎界でも大名跡で高い芸格を有します。
  • 松本白鸚は、松本幸四郎の名跡を譲った者が名乗る隠居名の位置づけです。
  • 市川染五郎は、若手役者の名跡であり芸格は比較的高くありません。
  • 松本金太郎は、市川染五郎に先立って幼少期に襲名する名跡となっています。

(門弟筋)

  • 市川高麗蔵   (いちかわ こまぞう)
  • 松本錦吾    (まつもと きんご)
  • 松本幸右衛門  (まつもと こうえもん)

以前は市川高麗蔵から松本幸四郎を襲名する事例もありましたが、現在では門弟の名跡となっています。

 

歴代の市川染五郎

最後に歴代の染五郎をざっと見てみましょう。

代数 生没年 襲名時の年齢 染五郎以降の主な名跡
初代 1737 – 1802 25才 4代目松本幸四郎
2代目 ? – 1828
3代目 1778 – ? 17才?
4代目 1870 – 1949 19才 7代目松本幸四郎
5代目 1910 – 1982 21才 8代目松本幸四郎、初代松本白鸚
6代目 1942 – 7才 9代目松本幸四郎、2代目松本白鸚
7代目 1973 – 8才 10代目松本幸四郎
8代目 2005 – 13才 (当代)

初代市川染五郎は4代市川團十郎の門弟であり、4代目松本幸四郎の名跡を継ぎます。

2代目、3代目は記録が不明な点も多いのですが、松本幸四郎の名跡は継いでいません。

3代目と4代目には血縁・養子関係はなく、4代目は9代目市川團十郎の門弟だった縁で松本幸四郎を襲名します。

それ以降4代目からは直系男子で継承されています。

当代8代目もおそらく、市川染五郎→松本幸四郎→松本白鸚の順で名跡を襲名していくと思われます。

 

まとめ

市川染五郎家系図

市川染五郎の家系を見てきましたが、いかがでしょうか。

歌舞伎役者の家系をたどると、江戸時代の初期から始まる歌舞伎の歴史をたどることにもなり、大変興味深いと思います。

屋号とそれに属する名跡一覧には歴代の襲名者が積み重ねた修練の歴史があり、芸事の世界の厳しさをかいま見ることができます。

当代の8代目染五郎さんは現在17才、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」木曽義高役で注目されました。

非常に端正な顔立ちで「美しい貴公子」役が板に付いています。

江戸時代的な二枚目とは違う現代的な端正さ、明らかに祖父2代目白鸚、父10代目幸四郎の系統に属しています。

出演作が少なく、役者としての技量はまだこれからの若手役者ですが、その資質や存在感から歌舞伎役者はもとより映画俳優、声優としても活躍しそうです。

高麗屋は進取の気風がある一門で、家系を見ても才能と実力を兼ね備えた役者を輩出しています。

当代8代目染五郎は、高麗屋の歴史を受け継ぐ注目の歌舞伎役者、美しい貴公子がどう成長していくのか楽しみです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。